あなたは今日、AIや機械学習に触れましたか?
このブログを読んでいる方なら、興味があって自分で調べているかもしれませんね。もしくは、Aidemy Premium Planで勉強中でしっかり触っているよ!という方もいるのでしょうか。ひょっとしたら、現役のデータサイエンティストで、触れるどころか作っている、使っている方もいてもおかしくはありませんね。
では逆に「触れていないと思うけどなぁ」というあなた!よく思い出してみてください。必ずどこかでAIを使ったり目にしたりしているはずです。2020年現在で、AIや機械学習、ディープラーニングなどにまったく触れずに生きている人はそう多くはありません。
例えば、AppleのSiriやAmazonのAlexaなどの音声認識アシスタントも、当たり前のように使ってはいますがAIです。英語の文章を読む時には、Google翻訳やDeepL翻訳を使う人も多いでしょう。当然、ニューラルネットワーク機械翻訳は機械学習を応用したサービスです。
はたまた、映像配信サービスを使ってドラマを見た方はいませんか?AIがユーザーの好みに合わせ、表示させるサムネイル(アートワーク)を細かく変えていることをご存知でしたか?下の画像は、Netflixの配信ドラマ「STRANGER THINGS」のアートワークです。こんなにバリエーションがあるのですね。
このように、AIや機械学習は日常のあちこちに潜んでいます。
そして、AIや機械学習の分野では日夜研究や開発が進んでおり、短期間にものすごいスピードで発展し続けています。そのため、これまでAIと縁がなかったフィールドでも、活用されている場合があるのです。この記事では、そんな「意外な場所」でのAI活用事例をご紹介します。
農業の天敵、病害虫
今回ご紹介するのは、株式会社LAplust(ラプラス)が開発した、AIを活用した病害虫早期診断技術についてです。
農業における問題の一つに、「虫」の存在があります。作物に入り込み、葉っぱに穴を開け、せっかく収穫した野菜や穀物の商品価値を落とす、というだけではありません。そもそも、虫のせいで作物が成長せず収穫ができなくなってしまう可能性だってあるのです。そうなってしまえば大損害です。高齢化や担い手不足が加速している農業の現場においては、深刻な事態に繋がってしまうかもしれません。
もちろんそれを防ぐための対策は行われています。農薬を散布するのもだってそのためです。しかし、ただやみくもに農薬を撒くわけにはいきません。それぞれの虫、もしくは雑草の種類に適した、ベストな農薬を選ぶ必要があります。とは言え、農業の従事者はあくまで作物の専門家。病害虫の被害が出た際には普及指導員と呼ばれる人に田や畑へ直接来てもらい、鑑定をしてもらわなければ適切な判断や処置が難しいと言われています。
画像認識で迅速解決!
そんな現状をなんとかしようと同社が開発したのが、AIによる病害虫の画像診断技術。スマートフォンを用いて被害状況を撮影することで、すぐに病害虫を判定することができます。その精度は90%以上。80種類以上の病気や、害虫による被害の診断が可能です。
この画像認識による診断は、独自に取得した十数万枚の病害虫画像から生成された深層学習モデルによって行われます。そして、同社製の深層学習エンジンを利用した病害虫診断APIは「アグリハブ」という農薬検索・農業日誌・売上管理を行う農作業管理アプリに搭載され、気軽に使えるようになっています。
病害虫を早期に特定することは、被害を最小限に抑え、生産量の向上、ひいては売上の向上に繋がります。農家は、判定された病害虫名からアプリ内で農薬の検索を行うことができ、迅速かつ適切な処置を行うことができます。
農林水産省も注目!
実はこの技術、農林水産省も注目しているものなのです。
平成29年度の農林水産技術会議にて、「人工知能未来農業創造プロジェクト」が、「重点的な委託研究プロジェクトによるイノベーション」の一つとして新規採択されました。この中で、AIを活用した病害虫早期診断技術の開発が推進されています。
令和3年度まで続く予定のこのプロジェクトでは、最終的に「生物種7,000種以上の画像・遺伝子情報を基にしたAI病害虫診断技術の開発」を目標として研究・開発が行われています。
2年目が終了した時点では、トマト、キュウリ、イチゴ、ナスに被害をもたらす主
要な病害虫種について、それぞれ約7万5千~10万枚の画像の収集が完了。また、これらのデータを、被害の程度や発生部位等の付帯情報と合わせてデータベース化し、AIによる機械学習を実施できる基盤を整えたとのことで、順調なペースで進んでいることがわかります。
さらに、主要な病害虫を含む合計5,047種の生物の標本コードや画像、遺伝子配列等の情報は収集済みで、カタログデータベース基盤の整備も完了、既に公開されています。実は、先述したラプラス社の深層学習モデルにも組み込まれているのです。ただプロジェクトに力を入れるだけではなく、成果を公開することで、より大きなインパクトのイノベーションを期待しているのでしょう。
まとめ
さて、今回は農業に使用されるAI技術の一つ、画像認識による病害虫早期診断技術についてご紹介しました。しかし、実を言うとこれは氷山の一角。想像以上に様々なAI関連技術が農業では使われています。
たとえば、中国の農薬散布用のドローンにはAIが搭載されたものが存在しています。これにより、完全自動航行と完全自動散布が実現しているのです。また、今後は収穫作業の際にもAI搭載ロボットが活躍するようになるかもしれません。一度スイッチを入れれば自動で収穫してくれます。
これらの技術により、人手不足や、属人化しやすく習得に時間のかかる技能などのボトルネックは少しずつ解決していくことでしょう。
AIや機械学習の技術は日々開発されつづけています。これからの農業など、第一次産業をも含む社会を変えうるAI技術、習得すれば様々な世界で活躍できる人材になれるはず。Aidemy Premium Planで学んでみませんか?
参考
フリー素材
NETFLIX
https://netflixtechblog.com/artwork-personalization-c589f074ad76
ラプラス社プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000067251.html
農林水産省
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/hyouka/itakupro/pdf/tyuukan_itaku-5_201903.pdf