創作におけるAIの活用事例 【TEZUKA2020,『ぱいどん』】

AI

AIによる『バットマン』の脚本?

突然ですが、みなさんは「AIが執筆した映画『バットマン』の脚本」をご存知でしょうか。
2019年の8月、Twitterに投稿された、このバットマンとジョーカーのやり取りは6.4万リツイートを超え大きな話題になりました。日本でもニュースサイトで紹介されたので、見たことがある方も多いかもしれません。

※なんでも、AIに1000時間ものバットマン関連の映像を学習させ、オリジナル脚本を執筆させたと言うのです。
その元ツイートはこちら。

内容を一部抜粋して見てみましょう。バットマンと宿敵ジョーカーが対峙するシーンです。
訳引用

バットマン:「さあ、俺とお前だけだ、ジョーカー。バットマンvsジョーカー。宿敵」

ジョーカー:「俺は変人だ。社会は悪い。お前が水を飲むように、俺は無秩序を飲む」

バットマン:「私はコウモリのようにコウモリを飲む!」

うーん、それっぽいと言えばそれっぽいのですが、トンチンカンなバットマンのセリフで台無し。
全文を読んでも脈絡のないやり取りが多く、なんとも言えない出来です。
やはりAIに創作は無理なのでしょうか…。
と思ってしまうのは早計。

実はこのツイート、AIエンジニアではなくコメディアンによるもの。
そう、全く専門性のないアカウントによるツイートなのです。

このコメディアンは以前もたびたび別のドラマシリーズの「AI脚本」ツイートを投稿しており、要はこのバットマンの脚本もいわゆる「ネタ投稿」なのでしょう(そもそも、2020年現在、映像を学習しテキストとして脚本を生成するAIは聞いたことがありません)。

な~んだ、やっぱりAIに創作は無理なんじゃないか、とお思いかもしれませんが、少し待ってください。
この「バットマンの脚本AI」が実現する未来はすぐそこに来ている可能性があるのです。
実際にAIが創作の現場で活躍した例を紹介しましょう。

TEZUKA2020

「もしも、今、手塚治虫さんが生きていたら、どんな未来漫画を描くだろう?」
このコンセプトで発足したプロジェクト、それが「TEZUKA2020」です。

AIを用いて手塚治虫の31年ぶりの新作を作ろうという内容で、先導するのは国内の半導体メーカー キオクシア株式会社(旧東芝メモリ株式会社)。
クリエイターや大学教授、漫画家を集め、まさに人知を結集し、『ぱいどん』(講談社)という作品を完成させました。
前後編に分けて『週刊モーニング』(講談社)に掲載された本作は、現在でもキオクシアのサイトで全編を読むことができます。
『ぱいどん』のあらすじは以下の通りです。

「高度に進化し、監視社会となった未来の東京。その流れに抵抗するように公園で寝泊まりする記憶喪失の青年、“ぱいどん”。彼の元に、ある姉妹が訪れる。彼女らの父親である、クリーンエネルギーの研究者を探してほしいという。相棒の小鳥ロボット、アポロからも説得され、渋々依頼を受けたぱいどんは、左目に義眼をはめ込んだ。するとのんきなホームレスから冷静な探偵に人格が変わったぱいどんは、早速研究所へと向かったのだった…」

なるほど、確かに「手塚治虫っぽい」あらすじです。
『ブラック・ジャック』や、『三つ目がとおる』を連想した方もいるのではないでしょうか。
このストーリーは、AIを使い、以下の手順で生み出されました。

  • 手塚治虫漫画65作品を、29項目に人力でデータ化し、世界観と背景分析を行なう。
  • 物語の展開を13に分類できるという「13フェイズ理論」に則り、一話完結型の短編131話を振り分け、データベースを作成。
  • プロット生成技術「ASBS(Automatic Scenario Building Sysytem)」で約130本のプロットを作成。
  • それを元に発想を膨らませ、シナリオライターによってシナリオ化。

ASBSは、慶應義塾大学理工学部 栗原研究室で開発されたプロット生成技術です。
プロット生成時に発生する矛盾や、主人公にそぐわない記述を置き換えたり、削除することも可能となっています。
また、ストーリーだけでなく、キャラクターのデザインもAI生成された画像が元になっています。

生成モデルの一種「StyleGAN」を使って、NVIDIAによる実写顔学習済みモデルをベースに、手塚治虫のさまざまなキャラクター画像数千枚を切り出して転移学習させて生成させ、漫画家などの手でブラッシュアップしたのです。
最終的なキャラクターデザインや作画はプロの漫画家などが手掛けましたが、扉絵などのペン入れは、機械学習した手塚治虫の筆致をロボットハンドで再現しています。

AIと人の創作活動

このようにして『ぱいどん』は完成しました。
ですが、お気づきの通り、すべてをAIが創作したわけではありません。プロットの選定や脚色、作画など、大半が人の手によるものです。あくまでAIが作ったのはプロットやデザインの素案。それを人間が肉付けして初めて作品として完成するのです。
ただ、実際に作品を読むとわかるように、『ぱいどん』はストーリーの各所に手塚治虫の名作の要素を感じます。
AIによるプロットで手塚治虫の特徴を捉えつつ、人間の手によって高い完成度となっている、好印象な作品ではないでしょうか。人間とAIのコラボレーションとして、堅実な方向性を『TEZUKA2020』と『ぱいどん』は示したのです。

このようにして、AIや機械学習は、人間の労働のみならず、文化活動にも影響を与えています。
しかしそれは、必ずしもAIが主役ではないのです。
ストーリーを生成するAIは他にもあります。たとえば、小説あらすじ生成AI「ひびのべる」や、AIによるストーリー生成ソフトウェア「フルコト」など…。

ただ、現状AI単体で成立するものはまだありません。

使うのは人間、現在人間が担っている部分の100%をAIがそしてやはりAIが人間に取って代わるわけではなく、人がうまく使ってこそ、その先があるのです。

逆に言えば、AIを活用する技術を身につければ、その先の選択肢は広がるはずです。

参考リンク
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70702?imp=0
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1237417.html

(執筆:トロニー)

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